LINE公式アカウントの構築を依頼されると、ほとんどの方が最初に「リッチメニューを作ってほしい」とおっしゃいます。たしかに、画面下部に広がるあのボタン群は見た目にも分かりやすく、「やっている感」が出ます。でも、構築の現場で実際に見えてくるのは、「リッチメニューを作ること」と「リッチメニューを設計すること」のあいだにある、大きな差です。
今回は、そこについて書いてみます。
「とりあえずボタンを並べた」リッチメニューの問題
よく見かけるのは、6つのボタンにサービスのカテゴリをそのまま当てはめたリッチメニューです。「メニュー」「予約」「アクセス」「お問い合わせ」「スタッフ紹介」「キャンペーン」——情報としては間違っていないし、むしろ網羅されているように見えます。
でも、ユーザーの立場で考えると少し違う景色が見えてきます。友だち追加した直後、あるいは何か調べたいと思ってLINEを開いたとき、6つのボタンを目の前に「さてどれを押せばいいのか」と立ち止まらせてしまっていないでしょうか。
リッチメニューが優秀なナビゲーションである条件は、「ユーザーが考えずに次の行動を取れること」だと思っています。
選択肢が多いほど人は迷う、という心理は「ジャムの法則」として有名ですが、リッチメニューにもそのまま当てはまります。ボタンの数を増やすことが、必ずしもユーザーの利便性向上につながるわけではない。
設計の出発点は「このアカウントのゴールは何か」
リッチメニューを設計するとき、最初に考えるのはデザインでも分割数でもありません。「このアカウントを通じて、ユーザーに最終的に何をしてほしいのか」という問いです。
整体院であれば、答えはほぼ「予約」です。個人コンサルタントなら「相談申し込み」かもしれない。飲食店であれば「来店」でしょうし、そのために「メニューを見てもらうこと」が先に来るかもしれない。
ゴールが決まると、リッチメニューの設計はずっとシンプルになります。「このゴールに向けて、ユーザーの背中を押す動線になっているか」というフィルターで、ボタンの内容と配置を決めればいいからです。
「何を置かないか」が設計の本質
6分割のリッチメニューには6つのボタンが入ります。でも、「6つ入るから6つ埋める」という発想が、多くの場合に使いにくさを生んでいます。
構築を通じて気づいたのは、リッチメニューの設計における本質的な問いは「何を置くか」より「何を置かないか」だということです。SNSのフォロー誘導、ホームページへのリンク、スタッフ紹介——これらをリッチメニューに入れることが本当にユーザーの役に立つのか、立ち止まって考えてみると、意外と「なくてもいい」ものが見つかります。
LINEというプラットフォームの特性上、ユーザーはすでに「このお店・このサービス」に興味を持って友だちになっています。そのユーザーが次に知りたいこと、したいことは何か。そこから逆算したとき、本当に必要なボタンは3つか4つになることが多い。
言葉ひとつで、クリックされるかどうかが変わる
もうひとつ、現場でよく気になるのがボタンのテキストです。「お問い合わせ」と「無料で相談する」では、ユーザーに伝わるものが違います。前者は窓口の名前、後者はユーザーが得られることです。
リッチメニューのボタンは小さく、見られる時間もわずかです。だからこそ、「押したら何が起きるか」がパッと分かる言葉を選ぶことが、地味ですが確実に差を生みます。
名詞で終わるボタンより、動詞で終わるボタンの方がクリックされやすい——これは体感として感じていることです。
設計に正解はないけれど、出発点はある
リッチメニューの設計に「これが唯一の正解」というものはありません。業種によっても、アカウントの目的によっても、ユーザーの行動パターンによっても、最適な形は変わります。
ただ、出発点はいつも同じです。「このアカウントを通じて、ユーザーに最終的に何をしてほしいのか」——この問いに向き合うことが、使われるリッチメニューをつくる第一歩だと思っています。
構築の依頼をいただくとき、私がまず確認するのはこの一点です。デザインや分割数の話は、そのあとです。